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レポート

「世界協同組合モニター(WCM)」で世界の協同組合トップ300を発表

2018年版では、新たに国連の持続可能な開発目標に重点

World_Cooperative_Monitor_2018国際協同組合同盟(ICA)は先週アルゼンチン・ブエノスアイレスで開催された第5回「協同組合サミット」で、「世界協同組合モニター(World Cooperative Monitor)」を発表しました。これは協同組合と社会的企業に関するヨーロッパ研究所(Euricse)と共同で毎年実施している調査報告書で、今回で7回目となります。本報告書は、世界的な協同組合運動の規模や強さの実態を明らかにし、世界の主要な協同組合や相互扶助による組織に関する報告をまとめたもので、2016年の財務データに基づいた協同組合の上位300ランキングやセクター分析も提供しています。

2018年の「世界協同組合モニター」では、合計8分野で2,575組織(前年から200組織増)の協同組合のデータを集計しており、うち1,157組織で売上高が1億ドル超となりました。また、上位300位の協同組合・相互扶助による組織の総売上高は2兆ドルを上回りました。

トップ300の協同組合組織の分野別内訳をみると、保険(32%)、農業(35%)、卸・小売(19%)、銀行・金融サービス(8%)、製造業・ユーティリティ(2%)、保健・教育・社会サービス(2%)、その他サービス(2%)となっています。

2018年の業績

上記大手組織による協同組合運動の業績は好調で、セクター総合上位はわずかな変動に留まりました。ICMIF会員団体からは、売上高でJA共済連が4位となりました。また本年より新たに設けられた「売上高の対1人当たりGDP比」の項目で、インドのイフコ(IFFCO)が首位、JA共済連が5位、韓国農協が6位となりました。

2018年の保険セクター業績におけるICMIF会員

保険セクターのトップ20ランキングでは、売上高でJA共済連が首位、オランダのアクメアが9位、イタリアのウニポールが14位にランクインしました。また売上高の対1人当たりGDP比でも、JA共済連が首位、ウニポールが8位、アクメアが10位となりました。

また、農業・食品セクターのランキングでも、保険業だけでなく、幅広い分野で展開する大規模な協同組合である会員2団体がトップ20に入りました。売上高では韓国農協が2位となったほか、売上高の対1人当たりGDP比ではIFFCOが首位、韓国農協が3位となりました。

SDGsに重点

2018年版の本調査書では、協同組合ランキング上位300のほか、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に関する分析も行われました。世界の主要な協同組合・相互扶助組織について、国連グローバル・コンパクトとGRI(Global Reporting Initiative)への報告文書を考察し、どのようにSDGs達成のための取り組みを行っているかを調査しています。

ブルーノ・ローランツ(Bruno RoelantsICA事務局長は、次のように述べています。

「協同組合・相互扶助組織が、公正な労働や環境保護を始めとするSDGs目標達成のための事業や取り組みを多数進めていることを喜ばしく思います。本報告書では、トップ300にランクインするアルゼンチンのサンコール保険グループ(Sancor Seguros)やフィンランドのメッツア・グループ(Metsä)、ブラジルのシクレディ(Sicredi)の事例を紹介しています。」

このうちサンコール保険はICMIF会員団体で、今回の報告書ではSDGsの目標8「生産的な完全雇用と働きがいのある仕事をすべての人に」への貢献取り組みが紹介されています。

サンコール保険はアルゼンチン有数の保険会社で、同社の企業社会的責任(CSR)プロセスを通じてSDGsを早くから事業戦略や業務に取り入れてきました。

報告書では、CSRサステナビリティ担当マネージャーのベティーナ・アスグナ(Betina Azugna)氏により、同社がSDGs目標達成のために導入した成功事例が説明されています。この一つである「道路安全モチベーション向上」プログラムは、自社、そして従業員の交通事故率が特に高い顧客企業を対象に実施されています。同社はアルゼンチンにおいて深刻となっている交通事故の問題について、従業員や顧客企業を対象に事故死亡率の引き下げに取り組んでいます。

アスグナ氏は、傘下の労災保険会社であるプレベンシオンART(Prevención ART)の事例を紹介しています。同社は労働者の安全徹底だけでなく、中小企業に対しても職場で事故が発生した際の財務的安定を確保するための取り組みを行っています。

アスグナ氏は、サンコール保険が同業他社の上を行く取り組みを進める理由として、協同組合のモデルと精神を挙げています。「当社は、人間と良好な健康状態を考慮したプログラムを作っています。当社の理念に従い、常に個人を第一に考え、共に働き、持続可能な市民を作るためのあらゆる事に配慮しています。物質的な利益や収入がすべてではありません。それこそが当社の理念であり、これを実践することにより、多くの良い結果を得られています。」

ジャンルカ・サルバトーリ(Gianluca SalvatoriEuricse事務局長は次のように述べています。

「協同組合と社会的経済のテーマは、機関、市民社会、企業をより団結させるという目的において、大きな接点を持つようになってきています。我々は引き続き持続的開発の枠組みやツールを通じて協力関係を構築し、社会問題に対応していく必要があるでしょう。」

「世界協同組合モニター(WCM)」について

「世界協同組合モニター」は、世界の協同組合・相互扶助組織、および協同組合の傘下にある非協同組合組織に関する信頼性の高い経済・組織・社会データを収集することを目的とした調査プロジェクトです。世界全体の協同組合運動に関する定量的データを毎年発表する唯一の報告書といえます。国際協同組合同盟(ICA)が欧州協同組合・社会的企業研究所(Euricse)の科学・技術的支援を得た本報告書は、2018年で7回目となりました。今回の分析は2016年のデータを基にまとめられたもので、協同組合ランキング上位300とセクター別データを発表しています。ランキングは主に売上高ベースと売上高の対1人当たりGDP比の2種類からなります。

本報告書のダウンロードはこちら

*韓国農協のデータには、農業・食品産業と保険・銀行業の売上高が含まれています。 

ICMIFサイトの英語ニュース記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。
記事日付 2018.10.30