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レポート

自動車保険を扱う協同組合/相互扶助の保険組織がシェアリングエコノミーへの対応を進める

Image_for_Faye_-_Emerging_risks_-_March_2019_0伝統的な自動車保険への需要が減少するなか、自動車保険を扱う協同組合/相互扶助の保険組織の存続は、独自の組織所有モデルの利点を活用して市場シェアを維持できる能力にかかっています。

新たなテクノロジーおよび消費者行動の進化によって人々の移動手段やそれを保障する保険の好みが変化しており、今後10年間で保険業界が直面する最大のリスクは、間違いなく自動車保険業界にとって新たなビジネスリスクとなっています。

国際協同組合保険連合(ICMIF)の最新レポートによると、保険業界全体と同様に、協同組合/相互扶助の保険セクターの保険料収入の3分の1近くは自動車保険からのものです。

個人的移動手段の保障(自動車を購入して12か月単位で保険に入ること)にかかる私たちの従来の概念は1世紀以上の間ほとんど変わりませんでしたが、今やそれが絶滅に向かっていることは明白です。

多くの協同組合/相互扶助の保険組織が自動車保険に大きく依存しているため、将来の繁栄(突きつめると組織の存続)は、伝統的な自動車保険への需要が消失する中で、交通関連の諸リスクへの新たな保障需要の出現に自らのビジネスモデルを適応させ市場シェアを維持する能力にかかっています。この新たな需要は、技術、社会、保険市場のあり方の変化といった複数の要因により形成されます。

第一に、自動車のテクノロジーはかつてないほど変化しており、今後10〜20年以内にACES(「自動化(Autonomous)」「コネクテッド(Connected)」「電気化(Electric Vehicle)」「シェアリング(Sharing)」の頭文字をとったもの)が道路交通の中心となるのは確実です。マッキンゼーによると、2010年以降で推定2,000億ドルがACESに投資されています。

自動車はもはや人が運転するものではなく単に乗るだけのものになり、間違いを犯しやすい人間ではなく、道路や周囲のインフラに設置されたセンサーや制御装置にリンクする洗練されたテクノロジーによって運用が行なわれるでしょう。それは、私達が100年以上前から馴れ親しんできた車とはかけ離れたものです。

第二に、シェアリングエコノミーは足元において自動車の利用方法を変えつつあり、この動きはさらに加速するものと考えられます。今日のドライバーは、レンタカー利用により車の所有・維持にともなう多額の金銭的コストを回避可能であり、Cuvvaのようなモバイルアプリのプラットフォームを通じて迅速に短期的な保険に入ることができます。

これは特に若いドライバーにとって魅力的です。彼らの世代は、1年単位での自動車保険を購入したことがない初めての保険利用者となる可能性さえあります。

リスク引受上の課題は明らかです。すなわち、データが完全ではなく、旅行の都度違う車に乗る可能性がある人たちの保障を引き受け、個別の旅行に対して保険料を計算することです。

組織所有モデル

協同組合/相互扶助の保険組織にとってこの変化は、必要となる変革のペースが不明確なことによって必然的に複雑なものとなります。もちろんこの試練は協同組合/相互扶助の保険組織だけのものではありませんが、協同組合/相互扶助のビジネスの所有モデルによりさらなるプレッシャーがかかっています。

変化の受け入れの遅れや、新たなニーズへの対応の失敗は、競争によると同じくらい早くビジネスの喪失につながる可能性があります。

一方で、変化の速さにより最終的に会員に対する価値の提供につながらないテクノロジーへの拙速かつ大規模な投資(今日の素晴らしいイノベーションは明日には時代遅れの遺物になる?)は、協同組合/相互扶助の組織とその所有者である組合員/会員との間のおしなべて強い信頼関係を損ねてしまう可能性があります。

この信頼関係は、持続可能性のある競争上の優位性を協同組合/相互扶助の保険組織に与えてくれるものです。組合員/会員との密接な関係は、組合員/会員が期待するニーズを深く理解し、その結果として即時性・敏捷性と持続可能な戦略とをバランスさせる方法を特定するために、関連グループや組合員/会員のパネルなどを通じて活用することが可能です。

これまでのところ、協同組合/相互扶助の保険セクターは、緩やかで十分な情報に基づいたペースで進んでいます。イノベーションハブが創設され、スタートアップ企業への投資が行なわれ、具体的なビジネス提携関係が確立され、とても素晴らしい技術的思考と、保険業界におけるきわめて豊富な経験とが結び付けられています。

車や駐車スペースのシェアを可能にしたり、車の所有者と整備士をつないだりといった様々なプラットフォームと提携している協同組合/相互扶助の保険組織の存在は、組合員/会員にとっての好ましい影響を強く予想させてくれます。現時点ではこれらの協同組合/相互扶助の保険組織は「伝統的な」自動車保険に比較してほんのわずかの「新テクノロジー」しか提供していないように見えるものの、テクノロジー業界との共創は保険事業者に貴重な経験を与えてくれます。勃興するインシュアテック(InsurTech)業界の先駆者の一角に入れば、交通とモビリティに関わるリスクに対する保障への道が開かれるのはほぼ間違いありません。

自動車保険関連だけではなく、協同組合/相互扶助の保険組織にとり重要かつ反復的なテーマにおいて、金銭的補填よりもリスク軽減や損失予防の手段の提供という役割の拡大がより大事です。

その役割は、従来の車とドライバーに対する保険契約から、ACESおよびユーザー保護への移行を上手く行なううえで不可欠です。

リスク予防

道路上におけるリスク予防は、協同組合/相互扶助セクターの自動車保険会社にとって単なる付属サービスではなく、そのビジネスモデルの不可欠な一部分であることを肝に銘じる必要があります。多くの主要な協同組合/相互扶助の保険組織は元来、母体となるグループに対する自動車保険の提供を目的に設立されたことを考えると、これは驚くべきことではありません。

世界のあらゆる地域において、損失の金銭的な補填にとどまらないサービスを自動車保険契約者に提供し、その損失予防のための活動が広範なコミュニティにも利益をもたらしている協同組合/相互扶助の保険組織を見つけることが可能です。

ほんの数例を挙げると、Folksam(スウェーデン)が数十年前に設立した交通安全研究所の研究成果は、自動車の安全性、チャイルドシート、むち打ち症の治療において全国的な改善をもたらしており、また、Maif(フランス)とSeguros Sancor(アルゼンチン)、そしてJA共済連(日本)は、子供たちと学校の先生に交通安全ツールを提供している数多くの団体のほんの一部です。NTUC Income(シンガポール)は、利用者/顧客にオートバイの安全トレーニングを無償で提供していますし、Achmea(オランダ)が開発したバーチャルリアリティ・ソフトウェアは、子供たちが安全かつ確実に通学するために必要なスキルを身に付けるのに役立っています。

しかし、業界全体で提供されている選択肢が非常に多いため、協同組合/相互扶助の保険組織にとって、組合員/会員との緊密な関係を維持・発展させ、独自の組織所有モデルのメリットを活用し、自己改革を続けることが不可欠です。

それによってはじめて、協同組合/相互扶助の保険セクターは、自動車保険の提供者からモビリティ(移動可能性)への保障の提供者へと変身し、100年をはるかに超す組織の平均寿命を期待することができます。協同組合/相互扶助の保険セクターにおける相対的な組織寿命の長さは、組織を自己改革し利用者/顧客のニーズに確実に対応することに長けていることを示唆しています。

本来このブログ記事は、ICMIFのビジネス・インテリジェンス担当シニアバイスプレジデントであるフェイ・ラグー(Faye Lague)が執筆し、Insurance Dayによって新たなリスクに関する特集のなかで掲載されたものです(2019年3月6日公開)。当ブログはInsurance Dayの許可を得て複製されています。
ICMIFサイトの英語ニュース記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。
記事日付 2019.3.12