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ICMIF会員団体の取り組みは、災害リスク軽減を目的にした「仙台フレームワーク」の実現に役立ちます

Javier Alonso Huerta

2021430日金曜日、ICMIFは、ICMIF-UNDRR(国連防災局、United Nations Office for Disaster Risk Reduction共同報告書「保護から防災へ:災害リスク軽減における協同組合および共済の役割の正式な立ち上げイベントとしてウェビナーを主催しました

この報告書は、協同組合および共済セクターが、防災と災害リスクの削減を推進するのにどのように役立つかについて、7つの実践的なメカニズムを明らかにしています。世界のICMIF会員団体の20の事例研究・分析に基づいて、このメカニズムは、協同組合および共済セクターが、国連加盟国によって採用された災害損失削減するための世界的な計画である「仙台フレームワーク」を実現するための実践的な方法を提供します。

このウェビナーではICMIFの会員団体がUNDRRと協力してメカニズムを実践する最初のパイロットプロジェクトも紹介されました。400人以上がウェビナーに登録し、ICMIFのこれまでで最も人気のあるウェビナーになりました。報告書は発表以来、120回以上ダウンロードされています。

ウェビナーでの冒頭の挨拶で、災害リスク軽減事務総長特別代表(Special Representative of the Secretary-General for Disaster Risk Reduction )の水鳥真美氏は次のように述べています。「国連災害リスク削減局は、2019年に協力関係を正式に結んで以来、ICMIFの実践的なアプローチと危機感を高く評価しています。これは、協同組合・共済セクターがリスク保護から防災へと移行するための方法を模索・促進するために重要な協力であり、災害リスクの軽減と回復のための世界的な青写真である「仙台フレームワーク」の実現に向けた重要な協力でもあります。」

水鳥真美氏は次のように続けています。「リスクに対する私たちの考え方を根本的に再検討する必要があります。リスクの相互関連性と連鎖的な側面は、政策、実践、および投資に反映されなけらなりません。仙台フレームワークでは、災害リスク軽減における民間部門、金融部門、およびその規制当局の役割を認識し、保険の役割を強調しています。今回の協力関係を通じて、保険部門がどのようにして災害リスクの軽減をサポートする方法についての共通の理解が得られただけではなく、すでに開発中のパイロットイニシアチブが開発されており、言葉を行動に移し、試験的な取り組みを行っています。」

水鳥真美氏は、地域社会との関わりにおける回復力と革新に焦点を当てたおかげで、協同組合・共済セクターは、保護から予防への移行について情報を提供し、主導する独自の立場にあることを実証したと確信しています。

ICMIFの会長でICMIFのメンバーであるPV Group(ベルギー)の管理委員会の会長であるヒルデ・ベルナイレン(Hilde Vernaillen)氏は、新たなリスクを防ぎ、既存のリスクを軽減することがこれまで以上に急務であると述べました。ヒルデ・ベルナイレン氏はウェビナーの開会の辞で、次のように述べています。「これは、一個人あるいは保険会社としての一組織が単独で取り組めるものではありません。私たちは何世紀にもわたって最も深刻なな危機の1つに直面しています。今こそ、人類の究極の存続のために有意義なパートナーシップを築き、知識を惜しみなく共有する時です。より良い社会のために協力すること、これはICMIFメンバーがほぼ1世紀にわたって行ってきたことです。私たちは、世界的なICMIFのネットワークを通じてそれを実現しています。価値観を重視する保険会社として、私たちは長期的に行動することができ、顧客や社会のために正しいことを行うと信頼されています。協同組合や共済組織は今回も前面からリードする態勢整えています。今回は、災害リスクの軽減と回復力の観点から行ってきた活動の例を紹介します。」

UNDRRのパートナーシップおよび利害関係者エンゲージメントユニットの責任者であるイリナ・ゾドロウ(Irina Zodrow)氏は、仙台フレームワークが採択される前の2014年にICMIFUNDRRの協力がどのように始まったかについて話しました。この協力関係は、2019年11月にオークランド(ニュージーランド)で開催されたICMIF総会で、正式決定され、保護から防災への移行に焦点を当て、協同組合部門の回復力フレームワークを開発すること(to develop a resilience framework )を最終目標にしています。この協力は、UNDRRが管理機関となっている仙台フレームワークに重点を置いています。また、イリナ・ゾドロウ氏は、今回の報告書で取り上げられている協力関係やケース・スタディーは、2030に向けての課題(2030 Agenda)のすべての合意事項に組み込まれているリスクと回復力という、より広範な2030に向けての課題を支えていると指摘しています。これらにはSDGsが含まれます。パリ協定開発のための資金調達に関する課題。そして都市に関する課題。それらを総合すると、短期的で直線的な経済や思考から、長期的で回復力のある持続可能な開発へと移行することが必要であるという非常に強い呼びかけがなされています。

この報告書は、協同組合・共済セクターが防災・災害リスクの軽減を推進するのにどのように役立つかについての7つの実際的なメカニズムを示しています。直接的なメカニズムの1つは、保険契約者のリスク削減のインセンティブとなる変動価格の適用です。

協同組合・共済セクターを通じた災害リスク軽減と回復力」支援のための7つのメカニズム

投資によるリスクの低減・防止とレジリエンスの向上の確保

直接的なメカニズム–保険商品が災害リスクを軽減するために:

  1. 保険の可変価格化を適用し、リスク削減のインセンティブを与える
  2. リスク削減のインセンティブとなるような前提条件や除外項目の設定
  3. 投資によるリスクを低減・防止と回復力の工場の確保

間接的なメカニズム–保険会社が災害リスクを軽減するために:

  1. リスクの体系的な性質についての認識を高め、危険性、暴露、および脆弱性を低減するための透明性のある情報とアドバイスを提供
  2. リスクモデリング、分析、モニタリングのための能力と技術の構築と共有
  3. 災害対応やリスク軽減するための革新のための地域の社会関係資本を促進と強化
  4. 公共部門との連携により、持続不可能な開発をに警鐘を鳴らし、保護のギャップを是正しながら、災害リスク軽減とリスク情報に基づいた投資に向けた意思決定を支援

ICMIFメンバーのランスフォークシェリンガー(LänsförsäkringarSak、スェーデン)のシニアアドバイザー兼元CEO、アン・ゾマー(Ann Sommer)氏が、Länsförsäkringarが行っている、より安全な農業を促進し、農場のリスクを減らすためのプログラムについて話しました。「このプログラムは「セーフファーム(Safe Farm)」または「セーフホースファーム(Safe Horse Farm)」と呼ばれ、農場で起こりうるすべての危険性について農家を教育することを目的にしています。プログラムでは、まず、農家のリスクに関するオンライン学習から始まり、その後、相互保険会社からの農場リスクの専門家の訪問が続きます。専門家は、農場で最もリスクの高いすべての場所を農家に指摘し、リスクを軽減するために必要な予防措置として、農場の変更計画を一緒に作成します。これらの措置が講じられ、リスクが軽減された農場には「セーフ・ファーム」認証が与えられ、リスクに応じた保険料が大幅に引き下げられます。ゾマー氏は、「安全な農場と低い保険料という、まさに win-win の関係なのです。」と言います。

もう1つの直接的なメカニズムは、保険会社がリスク削減のインセンティブを提供するための前提条件や免除を含めることです。ヒルデ・ベルナイレン氏は、彼女の協同組合保険組織であるP&Vグループの事例を紹介しました。その1つは、P&Vの商業ラインカバーで、P&Vの保障を利用する前に、企業は一定の保護措置を講じ、リスクを防止するためのポリシーの証拠を提供することが求められます。

国内の保険契約者の場合、P&Vは、モーターサイクリストが情報を交換したり、モーターサイクリストとして安全に運転するためのグッドプラクティスについて話し合うことができるコミュニティを作っています。このコミュニティの一員となることで、モーターサイクリストは保険の割引きが受けられます。また、このコミュニティでは、エアバッグを内蔵した個人用安全パックの着用を奨励しています。これにより、事故に巻き込まれてオートバイから落下してしまった場合でも、保護が強化され、リスクが軽減されます。コミュニティでは、事故が発生した場合など、必要に応じて緊急サービスに即座に警告を発する装置の着用を提唱しています。これはP&Vにとって非常に新しいプロジェクトですが、パイロット版は非常にうまくいっています。」とベルナイレン氏は断言しています。

この報告書で言及されている間接的なメカニズムの1つは、保険会社がリスクの体系的な性質についての認識を高め、ハザードのエクスポージャーと脆弱性を減らすための透明な情報とアドバイスを提供することです。

コーポレーターズ(The Co-operators、カナダ)の社長兼CEOであるロブ・ウェセリング(Rob Wesseling)氏は、パートナーシップを通じて、彼の組織が雹のリスク、森林火災のリスク、洪水のリスクなどについて意識を高めることができた例を紹介しました。「The Institute for Catastrophic Loss Production」(壊滅的損失額研究所 )は、Co-operatorsが提携している組織の1つで、この種の危険について優れた研究を行っています。その後、研究所は研究結果を公表し、市、州、さらには国がデータを利用できるようにしました。これにより、地域社会を保護しながら、建物や開発をどこにどのように配置するかという建築基準法などについて、適切な判断を下すことができるようになりました。

Co-operatorsが協力しているもう1つの組織は、「Partners for Action」で、洪水に特化した活動を行っています。Co-operatorsは、Partners for Actionの創設スポンサーです。彼らは、カナダ人が自分たちがさらされている洪水リスクを理解してもらうために多くの活動をしています。ロブ・ウェッセリング氏は、洪水地帯にいる大多数の人々は、自分たちが洪水の可能性がある地域にいることを理解していないので、適切な情報がない場合、彼らは彼らのリスクについて適切な決定を下すことができないと指摘しました。

ケーススタディはICMIF会員団体が保護から予防への移行を実践するのに役立つものですが、報告書に続くパイロットプログラムは、ますます気候変動の影響を受ける国や地域社会において、災害リスクの軽減と回復力への取り組みと資金調達のために画期的なものになることを目指しています。保険会社は、資金力とリスクに関する知識の両方を持っているという点で独自の立場にあります。協同組合や共済団体は、長期的な視点と目的を持った戦略を備えており、この分野をリードするのに理想的な組織です。このパイロットは、投資可能な回復力構築プロジェクトを特定し、それらを資本と組み合わせて、地域社会の回復力を高めることを目的としています。政府、地域社会、保険会社など、関与すべきすべての利害関係者にとって、まさに「win-win-win」の関係です。

水鳥真美氏は閉会の辞で、「「パートナーシップは物事を成功させるための鍵」であり、災害が多発する前に、予防と準備のための官民によるパートナーシップが増えることを願っている。」と、述べました。水鳥氏は、UNDRRをはじめとする国連機関の召集力を約束し、ICMIF会員団体、保険業界、政府と協力して、より強力な予防メカニズムを確保することを約束しました。

さらに、「自分とUNDRRは、7つの強固なメカニズムとパイロットイニシアチブを備えたこの報告書をICMIFと発表できたことを非常に誇りに思っています。」「既存の20のケーススタディに加えて、さらに多くのケーススタディとパイロットイニシアチブが必要であると考えており、これら7つのメカニズムを実装するための障壁とボトルネックをより理解する必要があるため、ICMIF会員団体ですでにいくつかのパイロットイニシアチブが開始されています。」「これらのメカニズムを運用するためには、政府や規制当局を含む他のパートナーとどのような対話を行う必要があるかを理解する必要があります。ICMIF会員団体のケーススタディを増やすため、もう一度、追加調査とデータ収集を行う必要があります。」と、述べました。

水鳥氏は最後に「今日、ICMIFの150人のメンバーが私たちと一緒にいることを知っています。皆さんに呼びかけたいことがあります。より多くのケーススタディを作成し、パイロットイニシアチブを構築するために、第2フェーズに参加してください。急いで...あまり時間がないので、遅滞なく運用フェーズに移りましょう。これは次のステップにとって非常に重要なことだと思いますが、一緒にやっていかなければなりません。」と、締めくくりました。

ウェビナーについては、こちらをご覧ください

ICMIFサイトの英語ニュース記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。

https://www.icmif.org/news_story/icmif-member-initiatives-will-help-implement-the-sendai-framework-for-disaster-risk-reduction/

掲載日付2021.5.20