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CARDグループのセンターミーティングを視察して

全国共済農業協同組合連合会 
経営企画部事業戦略グループ
調査役 蓮見 裕介              

私は、AOA訪問団の一員として2016年8月1-3日にフィリピンの「CARD MBA」を視察しました。フィリピンにおける低所得問題の深刻さ(約25%が低所得層)に触れるとともに、その問題の改善に取り組むマイクロクレジット・インシュアランス団体のマネジメントやオペレーションの流れ(支店運営・現地のやり取り等)を直接見聞きする貴重な機会を得ることができました。

Yusuke Hasumi, Zenkyoren
蓮見氏(中央)

視察の中で、特に印象的であったセンターミーティングについて、以下で触れたいと思います。

センターミーティングでは、マイクロクレジットの運営上、「融資の回収(1週間分の金利支払)」が非常に重要なことながら、私が個人的に着目をしたのは「不正をしない誓い」、「前回の議事の確認」、「マイクロインシュアランスの説明」についてです。

それぞれの役割は、概ね以下のとおりです。

1.不正をしない誓い

団体側と利用者が一体となって誓いを読み上げることで、日々、コンプライアンスに対する意識付け等を行う上で機能を発揮している。

2.前回の議事の確認

前回のミーティングへの欠席者等も含め、既に決まったことやルールを周知する上で重要な役割を果たしている。

3.マイクロインシュアランスの説明

実際に交通事故等にあった人が保険に入っていたため治療費や生活費を賄えたという生の体験談を聞くことで、保険の必要性を理解する教育機能を発揮するとともに、加入インセンティブの向上に寄与している。

  • 優れた事業スキーム
    このセンターミーティングは、運営側がどこまでの思いや役割を期待して、このような流れになっているのかは定かではありませんが、個人的には、非常に良くできたスキームになっているなと感心しました。なお、後日談ですが、今回の訪問団はセンターミーティングの視察の際、3グループに分かれ、それぞれが異なる会合を視察しました。中には、比較的高所得を感じさせるような立派な家のガレージを使ったセンターミーティングを視察した班もあり、私が視察した低所得エリアとはかなり違った印象をもたれたようでした。
  • 地域金融への役割
    また、地域金融への役割という面では、フィリピンのマイクロクレジット団体は、無担保で融資を行なうとともに、その後も教育や経営面のサポート等を行っていますが、日本国内においても健全性維持のため確実に回収できる担保を前提とした融資に終始してきた(地元企業との関係構築は軽視)地方銀行に対し、金融庁が経営面のサポート等にしっかり取り組んで関係性を深めていくこと(リレーションシップバンキング)を求める等、行政の運営方針には変化が見られます。
  • 日本との共通点
    最後に、日本にも、頼母子講や無尽等といった個人が連帯して資金融通をする仕組みは過去に存在していたし、協同組合は個人の助け合いによる相互扶助を事業理念としており、思想面を中心に相通ずるものを感じました。
  • まとめ
    そして、今回の視察を通じて、地域から必要とされるマイクロクレジット・インシュアランス団体の活動から日本のJAグループが学ぶことも多くあると感じました。日本のJAは、総合事業を通じて組合員等利用者の生活や農業に対するトータルサポートをしっかり行う組織であり、我々JA共済連は、共済を通じて地域の農業者・農業法人等に対する着実な支援を行い、これまで以上に地域になくてはならない活動を行っていく必要があると再認識する機会となりました。

以 上