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レポート

スイス再保険のSONARレポート:新型コロナウィルス関連の新たなリスクとトレンドを強調しつつ、現在の危機が低炭素の未来に移行する必要性を覆い隠すべきではないと述べる

今月上旬に発行されたスイス再保険研究所Swiss Re Institute)の最新SONARレポートは、新型コロナウィルス(COVID-19)のパンデミックにより新たなリスクとトレンドがくっきりと浮上しているものの、現在の危機が、世界がより持続可能な経済と低炭素の未来に移行する必要性を覆い隠すものであってはならないと述べました。

レポートの調査結果によると、世代間の緊張、サプライチェーンの混乱、公的医療の脆弱性は、新型コロナウィルスのパンデミックによって増幅されたリスクとトレンドの一部です。また、レポートでは、社会の準備が十分にできていなかったことを新型コロナウィルスの発生が示したことや、適切なリスク管理には幅広いリスク認識が不可欠であり、このSONARレポートが新たなリスクにフラグを立て、このトピックに関する対話を促進することも報告されています。現在の危機は、世界がより持続可能な経済と低炭素の未来に移行する必要性を覆い隠すものであってはならず、保険業界はこれにおいて極めて重要な役割を果たすことができるとレポートは指摘しています。

このレポートでは、長期的なマクロトレンドと激動の時代の文脈における、新たなそして変化するリスクについても説明しています。強調された特定のトピックには、いわゆるエッジ・コンピューティング()によるサイバーリスクの増加、電子タバコのブーム、新しくそしてより持続可能な建築材料に関する長期的な経験の欠如などがあります。

SONARレポートによると、新型コロナウイルスの発生を抑制するための封じ込め措置により引き起こされた景気後退は、世代間における社会契約への圧力の増大やサプライチェーンの混乱など、長期的な構造上の問題を悪化させています。高齢世代はパンデミックでより脆弱であることが判明しましたが、ミレニアル世代は高い失業率と教育支出からの借金に苦しんでおり、世代間の連帯が試されています。広範囲にわたるロックダウンなどの措置は、他のサプライチェーン問題の中でもとりわけ薬品の不足を引き起こしています。同時に、新型コロナウイルスの危機は、世界の多くの公衆衛生システムの脆弱性および、より良いリスク管理の必要性を明白なものとしています。

6月4日に発行された「2020 SONARレポート」は、リスク対話を刺激し、適切なリスク管理のための重要なステップである、社会および保険業界におけるリスク認識を醸成することを目的としています。

「将来を見据えたリスク管理の重要性を示すこの世界的危機の後、社会は多くの変化に適応する必要があり、その変化の一部はいつまでも残るでしょう。リスクナレッジ企業として、発生しつつある新たなリスクを取り上げ、それについての意識を高め、これらの前例のない時代にも回復力を構築し続けることが私たちの義務です」と、ICMIF協賛会員であるスイス再保険Swiss Re)でグループ最高リスク責任者を務めるパトリック・ラーフラウブ(Patrick Raaflaub)氏は述べました。

このパンデミックの経験は、政治情勢、規制環境、市場ダイナミクスにおけるシフトを促進し続けるであろうとSONARレポートは述べています。また、世界が景気回復計画に向けて動いており、優先順位の見直しも行われるでしょう。

  新型コロナウィルス後のより持続可能な未来

レポートによると、新型コロナウィルスの封じ込め措置とロックダウンにより、環境汚染は一瞬緩和されたかもしれませんが、地球温暖化を止めることはできないといいます。したがって、持続可能性が経済回復戦略にしっかりと組み込まれているネットゼロ経済への移行が鍵となります。

また、SONARレポートによると、世界が危機段階から脱し、ある種のパンデミック後の標準の状態に向って動き始めると、公共部門と民間部門は共に、世界の保健と気候変動の両方に焦点を当てる必要があります。低炭素経済への移行は多くの機会をもたらしますが、炭素除去スキームからのリスクなど、保険業界にとっての新たなリスクももたらします。

  ネットゼロへのロードマップ

スタート地点として、経済のすべてのセクター、特に輸送、農業および建築業界において、可能な限り排出を制限し減らす必要があると、レポートは述べます。残っている温室効果ガスは、生物学的または技術的手段を介して大気から除去し、その後恒久的に保管される必要があります。

ほとんどの気候モデルによれば、地球温暖化を産業革命以前のレベルから2°C以下に制限するには、温室効果ガス(GHG)排出量の削減と決定的な炭素除去が必要です。その目標を達成するには、炭素除去産業は2050年までに現在の石油・ガス産業の規模まで成長する必要があります。炭素除去産業はまだ初期段階にあり、大規模な実現可能性(スケーラビリティ)はまだ証明されていませんが、推定される成長は保険業界に豊富な機会をもたらすでしょう。

低炭素経済への移行には、政治的、技術的、行動的な変化が必要です。必要な変化に対処するための新たな方法を見つけることは、イノベーションが必要とされ、さまざまな分野にわたり、そしてリスクの知識やリスクの移転、投資など保険のすべてのコア領域において、新たなビジネス機会を提供します。保険業界は、経済の他のセクターのパートナーに専門家によるリスク移転の知識と能力を提供することにより、極めて重要な役割を果たすことができます。

2020 SONARレポートはこちらでお読みください。

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ICMIFサイトの英語ニュース記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。

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