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ICMIFブログ記事から:新型コロナウィルスの危機からリスク再考の機会が生まれる – 国連事務総長特別代表(防災担当)兼 国連防災機関(UNDRR)ヘッド 水鳥 真美/国際学術会議(International Science Council)CEO ハイデ・ハックマン(Heide Hackmann)博士

最新のゲストブログは、国連事務総長特別代表(防災担当)兼 国連防災機関(UNDRR)ヘッドの水鳥 真美氏と、国際学術会議(International Science Council)のCEOであるハイデ・ハックマン(Heide Hackmann)博士によって執筆されました。このブログ記事は当初トムソン・ロイター財団ニュース(Thomson Reuters Foundation News)に掲載されたもので、UNDRRの許可を得てここに公開されています。水鳥 真美氏からICMIF会員組織とそのリーダーへのビデオメッセージもご覧ください。
Our latest guest blog was written by Mami Mizutori, the UN Secretary-General’s Special Representative for Disaster Risk Reduction and the head of the United Nations Office for Disaster Risk Reduction and Dr Heide Hackmann, CEO of the International Science Council. The blog was originally published on Thomson Reuters Foundation News and is published here with the permission of the UNDRR. Watch a video message from Mami Mizutori to ICMIF member organisations and their leaders at the end of the blog.

 

ICMIF会員組織とそのリーダーへの水鳥 真美氏からビデオメッセージ(英語)

現在の健康の危機が、深刻な不確実性とリスクの高まりに直面し、協力・学習・適応する私たちの能力をストレステストする

新型コロナウィルス(COVID-19)は、1月末に世界保健機関(WHO)によって「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と宣言され、それ以降、人間開発の中心にあるあらゆる脆弱性があらわになりました。

災害リスク(健康を含む)の連鎖性の高まりに世界が対応できなければ、持続可能な開発目標(SDGs)は致命的な打撃を受けることになるでしょう。

今回の新型コロナウィルスの災害は、国際的な科学界が長年認識してきたことが顕在化したものです。すなわち、相互依存がますます強まる世界における私たちのライフスタイル、私たちの選択は、危険が絡み合って、システム全体に影響を及ぼし連鎖するリスクへとつながる複雑な形でコミュニティ、社会、経済全体に広がることを示します。

世界保健機関を含む数百人の主要な科学者と協力して作成された「国連世界防災白書2019」は特に、増大する生物学的危害のリスク、とりわけパンデミックとエピデミックの脅威について警告を行ないました。

2015年3月18日に国連加盟国によって採択された、災害による損失の削減のため世界的に合意された青写真である「仙台防災枠組」において、初めて生物学的危害が含まれました。

私たちが今はっきりと目にしているとおり、新型コロナウィルスは公衆衛生上の緊急事態をはるかに超えています。新型コロナウィルスのようなシステミックリスクは、相互に結びついた今日のグローバルな社会、環境、経済の生態系の複雑さに潜む固有の脆弱性を物語っています。

明確な例として、新型コロナウィルスは、気候条件、人の移動と貿易、都市密度、清潔な水と衛生設備へのアクセスの欠如、そして貧困と紛争の中におけるその他の生活の現実が、個人や組織の不十分なリスク管理能力と相まって、感染症発生がエピデミックからパンデミックへと広がり、最終的にグローバルな経済的・社会的災害となる条件を作り出すことを示しています。

最も重要なことは、新型コロナウィルスの危機は、深刻な不確実性とリスクの高まりに直面し、協力・学習・適応する私たちの能力をストレステストすることです。混乱や苦しみにもかかわらず、この危機は政府やコミュニティに対し、ガバナンス、投資、消費などの基本的な側面から自然との関わりまで、現代の世界を支える多くの要素に立ち返り、リスクの削減を政策の再始動の中心に置く機会を提供します。

究極的には、新型コロナウィルスのパンデミックに直面して、人間の健康を維持する上でのリスクとレジリエンスに関して現在行われている選択は、持続可能な開発のための2030アジェンダとそれ以降の目標に向けた進展を決定します。国連防災機関と国際学術会議は、これは絶対無駄にはできない機会であると信じています。私たちは、事後的な保障アプローチから積極的な予防アプローチへと一歩踏み出す必要があります。

新型コロナウィルスにより引き起こされる社会経済的損害への対応、あるいはその再発防止を目指す開発計画やイニシアチブは、新型コロナウィルスが世界的な災害になるに至った諸要因に対し十分な感度を持ち対処する必要があります。

したがって、私たちは政策立案者に対し、災害リスク削減、気候変動対策、持続可能な開発といった相互に結びついた分野全体で、エビデンス情報に基づく政策および統合された行動への投資を増やすよう求めます。政府や他の意思決定者が人々を保護し、世界経済を救うべく行動を起こすとき、政策立案者は科学の専門家と協力して、包括的なリスクのレンズが投資の決定と緊急時の資金調達に確実に適用されるようにする必要があります。

同時に、政府・立法者・規制当局は協力して、国と地方の予算において広く災害リスク削減への支出を増やす必要があります。これには、官民双方の投資決定に対する包括的なリスクアプローチが必要であり、気候関連財務情報開示タスクフォースや、関連する持続可能でグリーンかつ気候変動リスクに関する資金調達の議論などのイニシアチブによって生み出された勢いをつかむことが必要です。

私たちはまた、科学コミュニティーに対し分野を超えて協力し、システムとシステムコンポーネント間の相互依存性(前兆信号、フィードバックループ、変化に対する感度など)の理解を深めるよう要請します。例としては、複数の穀倉地帯における不作の脅威と、新型コロナウィルスの蔓延と気候の緊急事態の文脈における農業モデル開発の必要性があげられ、同時に脆弱性などの地域の状況も考慮する必要があります。

これらは全て、リスクがどのように生み出され、相互接続されたシステムにどのように伝播するか、そしていつどのようにリスクが顕在化するか、予期せぬ結果を伴う影響がどのように連鎖するのか、とりわけどのようにこれを防ぐことができるかについての理解を高めるために重要です。

不確実性は常に存在しますが、私たちが知っていること、発見できることはたくさんあります。不確実性と変化は脅威となる場合もあれば、成長し改善する機会となる場合もあります。それが後者であることを確認するために私たちは力を合わせる必要があります。

 

ICMIFサイトの英語blog記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。

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