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ICMIFブログ記事から:民間投資の導入で気候に配慮した持続可能な未来を実現可能にする – 国連開発計画(UNDP)ローレン・カーター(Lauren Carter)氏/世界銀行 サンドリン・ブケルシェ(Sandrine Boukerche)氏

最新のゲストブログは、国連開発計画UNDP: United Nations Development Programme、ジュネーブ)の気候ファイナンススペシャリストである ローレン・カーターLauren Carter)氏と、世界銀行の Invest4Climateで共同リードを務めるサンドリン・ブケルシェSandrine Boukerche)氏によって執筆され、2020年9月にUNDPのウェブサイトに掲載されたものです。ICMIFとUNDPは昨年、協同組合/相互扶助の保険部門が国連持続可能な開発目標(SDGs)の達成に不可欠であるとの認識に基づき、包摂的保険(マイクロ保険)や責任投資など、相互に関連する多くの要素を通じて協調関係を深めることを目的に、パートナーシップを締結しました。フォルクサム・グループ(スウェーデン)とコーポレーターズ(カナダ)の ICMIF会員2団体が、下記のレポート「持続可能なインフラストラクチャへの保険による投資の結集」に貢献しています。
Our latest guest blog was written by Lauren Carter, Climate Finance Specialist, United Nations Development Programme (UNDP, Geneva) and Sandrine Boukerche, Co-Lead Invest4Climate, World Bank and was published by the UNDP on its website in September 2020. Recognising that the cooperative/mutual insurance sector is critical to the delivery of the United Nations’ Sustainable Development Goals (SDGs), ICMIF and the UNDP formed a partnership last year that aims to deepen our collaboration through a number of inter-related elements, including inclusive insurance (microinsurance) and responsible investing. Two ICMIF member organisations, Folksam (Sweden) and The Co-operators (Canada), contributed to the “Mobilizing Insurance Investment in Sustainable Infrastructure” report which is mentioned below.

 

低炭素で気候変動に強い移行を実現する上での重要課題は常に慢性的な資金不足でした。特に新興市場や開発途上国では、新たな資金源を見つけ、あるいは既存の資金源を活用する必要があります。これは、公共予算をより上手くより賢明に使う方法から、国際的な公的気候金融をより変革的なものとする方法、そして民間部門を取り込み、もっと効果的に活用するための取り組みまで多岐にわたります。インフラ投資ギャップの推計は測定が複雑であり、使用するシナリオや仮定によって異なってきますが、気候に配慮したインフラへの多額の投資の必要性と、2030年までに毎年GDPの2〜8パーセントとなる気候投資ギャップの存在は明白です。

新型コロナウィルス危機の経済的影響が沈静化するにつれ、このギャップはおそらく広がるでしょう。では、今パンデミックに対して各国が行なっている投資が、より回復力があり持続可能で豊かな未来のための基盤を構築しつつ、雇用創出や切望される経済の安定などの切実な短期と長期の双方のニーズに確実に応えるには、何が必要でしょうか?国、都市、企業はどのようにすれば、排出量が高く脆弱性の強い道筋に固執することを避けつつ、代わりに健康的な生活、持続可能な環境、競争力のある経済を実現する、気候に配慮した成長戦略に投資することができるでしょうか?そして、決定的なことは、金融イノベーションと協調的パートナーシップを通じて、気候変動対策への民間投資をどのように導入し拡大できるのかということです。

世界銀行グループと国連開発計画が共同管理する「Invest4Climate」プラットフォームは一連のレポートを通じて主要な気候セクターを調査し、進捗状況と教訓を確認しています。具体的には、民間投資を拡大する上での障壁は何か、そして、プロジェクトのリスクを軽減し、貸し手の資本を再利用し、都市インフラへの民間投資を拡大し、機関投資家からの投資を集めるために学ぶべき革新的な資金調達アプローチおよび事例は何か、といったことです。以下は、変革的な気候変動対策のために民間セクターを活用する主要な機会についての概要です。

1. 未来の気候スマートシティの構築:推定で世界の排出量の70%を占める都市における炭素排出量の緩和は、低炭素で気候変動に強い成長にとって不可欠です。各国政府が支援する統合されたシステムベースのアプローチと空間戦略に投資し、民間投資資金を緑の建築、再生可能エネルギー、低炭素輸送、循環型廃棄物、都市農業に導入することで、都市は将来の居住性、安全性、競争力を高めながら、排出量と脆弱性が高い経路に縛られることを避けることが可能です開発途上国の都市への投資機会は29.4兆米ドル(3,116兆円)を上回りますが、都市は民間資金にアクセスする上で独特の障壁に直面しており、投資家は都市とその財政状態にあまり詳しくないことが多く、これらの資金流入を活発にすることは困難です。レポート「気候スマートシティへの民間投資の促進」では、こうした都市への投資障壁を理解するための枠組みを提示し、メキシコの都市部沿岸の回復力のための自然資本保険商品、チリの電気バスのグリーンバルク調達、南アジアの排出量や大気汚染を削減するグリーンテクノロジーへの投資を奨励する債券など、革新的な資金調達アプローチの10の事例を紹介しています。
2. 機関投資家から巨額の資金を呼び込む:OECD諸国の機関投資家は100兆米ドル(1京6,000兆円)以上の運用資産を保有していますが、特に新興市場では、投資可能な投資種類や投資障壁によって制約を受けることがしばしばあります。レポート「気候スマートインフラへの機関投資の関与」は、新興市場のインフラと気候スマートインフラへの投資に関心を持つ機関投資家やステークホルダーのためのリソースです。このレポートでは、大規模なグリーン証券化、グリーン資産担保証券、革新的なソーラー収入プットのアプローチなどを通じて、機関投資家の資金で長期債務を借り換えたプロジェクトの8つの革新的な事例を紹介しています。レポートは、グリーンフィールド・プロジェクトへの資金提供を継続し、資本を循環させるための実行可能な道筋として、銀行のバランスシートが制約されインフラに長期資金を提供できないという新興市場の環境下において、借り換えが重要なアプローチを提供する事例を取り上げています。
3. 保険による投資の拡大とその活用:インフラへの投資は保険会社の長期負債にマッチする予測可能で安定したキャッシュフローを提供すると同時に非流動性プレミアムも生み出すため、魅力的な投資機会を提供しますが、歴史的に見て保険会社は、インフラに対して運用資産33兆米ドル(3,498兆円)の 2.5%未満しか投資していません。さらに、保険の引受人として、保険会社は物理的な気候リスクや、低炭素で気候変動に強いインフラへの投資のメリットを十分に理解できる立場にあります。投資と引受の間の好循環により、保険会社は気候に配慮した投資をリードする上で非常に有利な立場にあります。レポート「持続可能なインフラストラクチャへの保険による投資の結集」では、保険会社が低炭素で気候変動に強いインフラへの投資を拡大する際に直面する技術、規制、資金上の課題を分析し、国連や開発金融機関がこの重要な資産クラスに運用資産のより多くの部分を振り向けるために保険業界を支援する方法について、解決策や洞察を提供しています。
4. 民間投資環境のマッピング:民間投資家は、数兆ドル単位の気候投資ギャップを埋める上で極めて重要な役割を果たします。しかし、保険会社の運営方法、リスクとリターンに関する期待値、そして気候変動により発生する脅威と機会への彼らの見解は、開発や政策の専門家にはあまりよく理解されていません。レポート「気候変動対策への民間投資のエコシステム」は、民間投資の非常に幅広いエコシステムや、気候変動に対応した投資に影響を与え、それを可能にする市場ファシリテーター(公的機関とのやり取りを含む)をよりよく理解することに関心のあるステークホルダーのためのリソースガイドとして機能します。

これらのレポートは、世界銀行のファイナンス・ストラクチャリング部門、グローバル・インフラストラクチャー・ファシリティ(GIF)、国際金融公社(IFC)、そしてUNDPの金融セクター・ハブとグローバル環境金融部門の支援を得て作成されました。

ICMIFとUNDPの連携について詳しく知りたい方は、ICMIF事務局長のショーン・ターバックShaun Tarbuck)にお問い合わせください。この記事をICMIF会員と共有することをご許可いただいたローレン・カーター氏とサンドリン・ブケルシェ氏に感謝申しあげます。「持続可能なインフラストラクチャへの保険による投資の結集」はこちらからどうぞ。

※ 文中の金額は1米ドル=106円で換算

 

ICMIFサイトの英語blog記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。

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