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インドにおける独立したマイクロ保険会社の規制に関する報告書の作成にICMIF会員団体が貢献する

2020年2月、インドのICMIF会員団体の National Insurance VimoSEWA Cooperative LtdSEWA)の代表であるミライ・チャタジー(Mirai Chatterjee)氏は、インド保険規制開発局(IRDAI)が設立した独立型マイクロ保険会社に関する検討委員会の長として招聘され、インドにおける独立したマイクロ保険会社の設立の必要性と実現可能性を評価する方法について提案するよう求められました。同委員会は、他国における関係法制の分析を通じて、そのようなマイクロ保険プロバイダーの設立を可能にするために、既存の法律・規制の枠組みを見直す責任も負っていました。独立型マイクロ保険会社検討委員会の報告書が発行され、2020年9月30日にIRDAIの会長および理事全員に提出されました。また、報告書の所見に関するコンサルテーション・プロセスの一環として、IRDAIのウェブサイトでも公開されています。この報告書は、2020年10月16日(金)にVimoSEWA協同組合が開催した記者会見でも発表されました(プレスリリースはこちら)。同委員会には、インドと海外の多数のマイクロ保険実務家、保険会社、専門家が参加し寄与しました。同委員会は、さまざまな国の規制と法的枠組みを調査し、これらがマイクロ保険の成長と普及にどのような影響を与えたかを検証しました。インドが直面する課題を念頭に置きつつ、これらの審議に基づいて同委員会は多くの提言を作成し、それらはIRDAIによる検討に向けこの報告書の中で共有されています。

委員会は、ICMIFを含む国内外のマイクロ保険の実務家および専門家と協議し、何が機能し何が機能しなかったかについての知見を得ました。委員会の作業の大半が新型コロナウィルスのパンデミック下で行われたことから、メンバーは直接顔を合わせることができず、代わりに全員がオンラインで招集されました。外部環境にもかかわらず、メンバー全員が経験と専門知識を提供しました。彼らは報告書を共有し、マイクロ保険に対する委員会の理解を深め、その提言を形作るのに役立つ論文を執筆しました。ミライ・チャタジー氏は次のように述べています。「パンデミック期間中にこのテーマに取り組んだことで、すべての人、特に最も脆弱な人たち、つまり我が国のワーキングプアにとって、マイクロ保険の保障がいかに重要であるかを私たちに納得させてくれました。」

他のICMIF会員は、委員会の作業の一環として意見を求められました。具体的には、ダーン・ファンデーション(DHAN Foundation、インド)のアヒラ・デビ(Ahila Devi)氏、アップリフト・ミューチャルズ(Uplift Mutuals、インド)のクマール・シャイラブ(Kumar Shailabh)氏、CARD MBA(フィリピン)のメイ・ダワト(May Dawat)氏とその同僚、ゴート・トラスト(Goat Trust、インド)のサンジーブ・クマール(Sanjeev Kumar)氏、RIMANSI(フィリピン)のジュン・ジェイ・ペレス(Jun Jay Perez)氏らが参加しました。また、国際協同組合保険連合(ICMIF)の新興市場担当シニア・バイスプレジデントで、ICMIFファンデーションの最高経営責任者を兼務するサビエ・パテル(Sabbir Patel)氏もこのパネルを支援しました。

VimoSEWA協同組合は委員会に自組織のデータを提供し、その最高経営責任者であるシュリカント・クマール(Shreekant Kumar)氏はIRDAIチームと協力して、5,000万ルピー(7,250万円)、1億ルピー(1億4,500億円)、2億ルピー(2億9,000万円)の自己資本で、マイクロ保険事業を存立可能な方法でいかに実施できるかを示しました。これは、資本規制を現在の10億ルピー(14億5,000万円)から引き下げるための事例の強化に役立ちました。

ミライ・チャタジー氏は、インドにとってのマイクロ保険の重要性を次のように要約しています。「マイクロインシュアランスを信頼し、苦労して稼いだお金で家族の将来を保障しているすべての保険契約者に感謝の意を表します。私たちは、この報告書が彼らの希望と夢に正義をもたらし、すべての人びと、特にこの国で最も脆弱な人びとへのマイクロ保険の普及につながることを望んでいます。私たちはまた、マイクロ保険が金融包摂と社会的保護のためのもう一つの手段となり、家族が貧困から抜け出せるようになることを望んでいます。加えて、私たちの報告書とその提言が、経済力をつけ自立するというインドの女性たちの目標を達成し、それにより私たち全員にとってより良い健全なインドを築くのを助けるのに貢献すると確信しています。」

報告書は、インドの低所得世帯が保険に加入する必要性は十分に強調されておらず、それがインドの金融包摂計画の重要な部分でなければならないと主張しています。2011-12年の推計によれば、約4億3,500万人 [1] がインドの非公式または非組織部門に属しており、労働力人口の90%以上を占めています。この数字は、過去10年間で少なくとも5億人 [2] に増加したと間違いなく推測されます。これらの労働者はインド国民の中でも低所得層であり、マイクロ保険で保障する必要があります。低所得世帯にとって、病気、事故、死亡、資産の喪失などの厄難は、多くの場合非常に深刻な経済的影響があります。そのような出来事は、わずかな資源が枯渇するにつれて、これらの家族をより一層の貧困に追いやる可能性があります。多くの人は、能力を超えて借金をし、生産のための資産を売却し、子どもを学校に通わせずあるいは子どもを労働させ、食べ物について妥協し、病気を治療せずに放置したりした結果、債務の罠に陥ります。同報告書によると、マイクロ保険は解決策を提供し、これらの家族がさらに貧困に陥るのを防ぎます。

この報告書は、何百万人ものインド人、特に非公式部門に属する人たちが新型コロナウィルスのパンデミックで生計を失っている時期に発表され、委員会はマイクロ保険市場の拡大を加速するために、独立したマイクロ保険会社を設立するための当初資本要件を現在の10億ルピー(14億5,000万円)から、5,000万ルピー(7,250万円)、1億ルピー(1億4,500億円)、2億ルピー(2億9,000万円)に引き下げることを勧告しました。保険業法に規定される最低資本要件の10億ルピーが、これまでのところ、インドのマイクロ保険市場の拡大に対する最大の障害となっていると、委員会は信念をもって述べています。委員会は、より多くのマイクロ保険会社がインドで設立されるのを可能とするため、当初の最低資本要件の水準引き下げを主張しています。

また、同報告書は、インドが保険普及率を大幅に高めたければ、(他国で見られるように)複数保険会社にアクセスできるように改善する必要があると指摘しており、委員会は、マイクロ保険会社(協同組合や相互扶助組織も同様)が、一つの組織で生命保険と損害保険の両事業を取り扱う複合保険会社として役割を果たすことを許可されるべきであると提案しました。「彼らのポートフォリオは、生命保険事業と損害保険事業の両方のバランスが取れている必要があります」と委員会は述べました。

ただし、これらの変更により、独立型のマイクロ保険会社を監督下に置くためには、1938年保険業法の改正が必要になります。これには、マイクロ保険およびマイクロ保険会社を公式な用語で定義すること、資本要件の引き下げ、独立型マイクロ保険会社の資本要件を決定する権限を保険規制当局に与えることなどが含まれます。しかし、委員会によると、1938年保険業法の改正には時間がかかる可能性があります。

中央政府は短期的には、1999年IRDA法の第14条(2)(q)で読まれる第24条(2)(c)に基づく規則を発行し、新設されるマイクロ保険会社の規制の枠組みを整備する権限をIRDAIに与えるように求められる可能性があります。経済特区(SEZ)内の事業体を規制する権限をIRDAIが持っていなかった時に、経済特区における保険会社を認可するために中央政府がそのようなアプローチを採用したと、委員会は報告書で述べています。

委員会はまた、最高の健全性基準を維持しながら、マイクロ保険事業の漸進的な成長を可能にするために、リスク対応自己資本(RBC)アプローチを採用すべきであると提案しました。

同報告書は保険普及率の低さについて言及し、「専業の独立したマイクロ保険組織は、低所得世帯が保険を手頃な価格で利用できるようにすることで、このギャップを埋めることができ、それによってリスクの軽減と安心の手段を提供します。したがって当委員会は、低所得層に対応できるような事業を政府とIRDAIが認可することを提言します」と述べています。

報告書はまた、IRDAIおよび/または中央政府がマイクロ保険開発基金を設立するように提案しました。

独立型マイクロ保険会社検討委員会の報告書をダウンロードします。

写真:年次総会において出資者に語り掛けるSEWAのミライ・チャタジー氏

[1] Srija, A and Shirke, Shrinivas V., An Analysis of the Informal Labour Market in India Confederation of Indian Industry report pg 41 [https://www.ies.gov.in/pdfs/CII%20EM-october-2014.pdf]

※ 文中の金額は1インドルピー=1.45円で換算

 

ICMIFサイトの英語ニュース記事(以下にリンクを表示)を許可を得て翻訳・転載しています。

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