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オーストラリア政府、協同組合/相互扶助団体に関する法律の改正計画を発表

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オーストラリア政府は2017年11月上旬、「ハモンド・レビュー」の提言を全面的に採択し、協同組合/相互扶助団体の拡大を促進する方針を明らかにしました。

これにより、オーストラリアの協同組合などに、長期的な事業投資に必要な新規あるいは追加的な資金調達の可能性が開け、オーストラリア国民全体の利益につながることが期待されます。

これは同国の協同組合・相互扶助団体事業協議会(BCCM)、主導的な業界団体であるミューチュオ(Mutuo)、および国内15の相互扶助団体の2年間にわたる努力が功を奏したものです。BCCMはオーストラリアの協同組合・相互扶助団体の代表組織であり、組合員や加入者の出資による事業体を総体的かつ網羅的にまとめる唯一の組織です。ミューチュオは、主導的な相互扶助団体の業界団体であり、広報や政治的主張、政策策定、相互扶助団体の経営コンサルティング活動を通じて、あらゆる種類の協同組合/相互扶助団体の振興に取り組んでいます。

オーストラリアの会社法では、これまで相互扶助事業の定義がありませんでした。BCCMによると、このため協同組合や相互扶助団体は、本来の事業目的にそぐわない組織構造を取らざるをえないという問題がありましたが、その結果、相互扶助団体は「普通とはちがう」と見られがちな上、株式会社のための法律に従わざるをえませんでした。

協同組合/相互扶助団体への投資の新たな選択肢として、以下が挙げられています。

      • 相互扶助団体の預金取扱金融機関(ADI)による出資証券(MEI)の発行認可に関し、所管のオーストラリア健全性規制庁(APRA)を政府が政策面で後押し
      • 連邦政府に登録された協同組合/相互扶助団体の資本性商品の発行に関する新法の制定

協同組合/相互扶助団体は会社法が適用されており、協同組合/相互扶助団体のステータスを失う恐れからこれまで普通株式の発行による資金調達ができませんでした。他国においては、この問題は特定のカテゴリーを設け、法律で議決権や対象資産の制限を義務付けることで解決されています。

新たな資本性商品を導入することにより、個人や法人が協同組合/相互扶助団体の事業に出資することが可能となります。

今回の発表により、オーストラリアの協同組合などに、長期的な事業投資に必要な新規あるいは追加的な資金調達の可能性が開け、オーストラリア国民全体の利益につながることが期待されます。これにより、協同組合/相互扶助団体は新たな投資家層を迎え入れることを選択できるようになります。

この政府の発表は、協同組合、相互扶助団体、および組合員や加入者の出資による事業体についての諸改革を求めるオーストラリア連邦議会上院の諮問に対する正式な回答の一部です。

新たな法律では、協同組合/相互扶助団体の資金調達改善を目的とした規制・法律改正のための「ハモンド・レビュー」に示された11の提言すべてが採択されます。なお、改正法が成立するまでは、協同組合/相互扶助団体はそのステータスを失うリスクを冒すことなく証券発行を通じた資金調達を行うことはできません。

しかし法改正の可決後は、組合員や加入者が出資する事業体にとり、短期の債務に対応する十分な手元流動性を保ちつつ、戦略的投資を行う余地が広がります。

2,000以上の協同組合/相互扶助団体を代表するBCCMのメリーナ・モリソン(Melina Morrison)CEOは、「この法改正は、業界に対する束縛を解く大改革であり、これまでアクセスできなかった数十億ドルの投資資金がオーストラリア国民所有の事業に流入することを可能にするものです。私たちは、連邦政府の決定を歓迎します」と述べています。

また同氏は、協同組合/相互扶助団体はすでにオーストラリアのGDPの8%以上を占めていることから、この改革は同国経済にも恩恵をもたらすとして、次のように述べました。

      • 「協同組合に投資された資金は、組合員がいるコミュニティに留まり、周辺の事業へと流れていきます。」
      • 「この決定により、利用者により所有される銀行にとって競争環境が平等になり、投資家により所有される株式上場した銀行にとっては健全な競争が生まれ、利用者が得をするわけです」
      • 「経済全体から見ても、当セクターへの投資は熱しやすく冷めやすい株式市場とは異なる、長期的視野への転換のきっかけとなるでしょう」
      • 「法改正により、医療保険から介護保険、農業保険、ロードアシスタンスまで、多岐にわたる分野に資本が流入するようになります」
      • 「さらに、利用者により所有される事業では、株主ではなく利用者に利益を再配分するため、余剰金は必ず国内に留まり、オーストラリア経済を押し上げることができます」

ミューチュオのピーター・ハント(Peter Hunt)氏は、「今日はオーストラリアのすべての協同組合と相互扶助団体にとって画期的な日です。この働きかけを通じて、我々はビジネス環境の改善を擁護すべく取り組んできましたが、本日の政府発表は、私たちのセクターが、オーストラリア経済全般に大きな影響を及ぼしうることが認められた証といえます」と述べました。

また同氏は、「新たな資本性商品の導入によって、投資環境を変える強力な資産クラスが構築され、協同組合と相互扶助団体による投資やイノベーション、成長、競争を可能とすることが期待されます」と結論付けました。

法改正案で示された新たな資本性商品は、ミューチュオが英国で考案した住宅金融組合会社や相互扶助の保険団体のための商品に類似したものであり、協同組合や相互扶助団体の資金調達オプションや競争機会の拡大を目指して、同団体が世界中で展開している運動の一環をなしています。

 

ICMIFサイトの英語ニュース記事を許可を得て翻訳・転載しています。

 

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