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活動の記録

【レポート】 ICMIF総会 ヤングリーダープログラム参加報告

ICMIFは、2019年11月12日~15日にオークランド(ニュージーランド)で開催の隔年総会における、2017年ロンドン総会に続き2度目となる「ヤングリーダープログラム」の実施を発表しました。これは、当プログラムに対して参加者および所属団体等から非常に高い評価が与えられたことに基づく決定です。

この流れを受け、2018年12月6日~7日に香港で開催のAOAセミナーにおいても、ヤング層向けプログラムが実施されます。

当レポートは、日本共済協会(ICMIF会員)が発行する月刊誌「共済と保険」2018年2月号に掲載された、2017年ヤングリーダープログラムの参加者による参加報告を、許可をいただき転載したものです。上記各イベントへの参加検討にあたり、実際のプログラムの様子や雰囲気を知るためのご参考となれば幸いです。

 

  • 一般社団法人日本共済協会 月刊誌『共済と保険』(2018年2月号) から転載

<ICMIF総会報告II>  

ヤングリーダープログラム参加報告

JA共済連ヤングリーダープログラム参加者
松浦竜也・新居悠輝・吉田浩樹・佐々木啓介・松浦拡希

1. はじめに

前回2015年に開催のICMIF総会において、「共済・保険分野でのデジタル技術の活用」とデジタル・ネイティブと言われる「若年層(ジェネレーションY)」が注目され、今回、イギリス・ロンドンで開催されたICMIF総会では、新たな取組みとして、35歳以下の世代向けに「ヤングリーダープログラム」が組み込まれました。

当プログラムは、会員組織において若年層に機会を与え、今後の活躍の場を広げることを目的に、異なる国や地域の若年層がネットワークを広げ、学ぶ機会として、「ネットワーク構築」「トレーニングプログラム」「ICMIF会員の経営幹部との懇談」の3つのプログラムが用意されました。

世界16カ国から集まった55名の参加者は、専門や所属部門も多岐にわたり、肩書きにおいてもエグゼクティブから一般職員までさまざまでした。日本からは、JA共済連から5名、コープ共済連から5名、全労済から2名、大学生協共済連から1名、合計13名が参加しました。

朝食セッション2 「ICMIF会員の経営幹部との懇談」の様子

ヤングリーダープログラム参加者の記念写真
ヤングリーダープログラム参加者の記念写真

 

 2. ITを活用した事前準備・情報共有

デジタル・ネイティブ世代に対応し、参加者は「LinkedIn」というSNSを通じて事前登録(自己紹介等)を行い、SNSで事前に他の参加者情報を把握できるネットワークが構築され、事前の登録内容をもとに朝食セッションのグループ編成が行われる等、ITを活用した画期的な手法が採用されました。

 

LinkedIn画面
LinkedIn画面
3. ヤングリーダープログラム(内容)

 

日  付 時 間 内  容
10月17日(火) 18:00-19:30 参加者歓迎レセプション
10月18日(水) 07:30-08:30 朝食セッション1 「トレーニングプログラム」
テーマ:「リーダーとして求められるコミュニケーション能力について」
講 師:ジム・オルーリン氏(JOLコンサルティング、イギリス)
18:00-19:00 ネットワーキング(参加者懇親会)
10月19日(木) 07:30-08:30 朝食セッション2  「ICMIF会員の経営幹部との懇談」

 

 (1) ネットワーク構築

プログラム全体を通して重視されていたのは、参加者間でのネットワーク構築です。歓迎レセプションや懇親会はもちろん、全てのプログラムを通して参加者同士が情報交換できる機会がありました。普段の仕事の悩みや問題点を共有し、解決のヒントとなるような情報が得られたり、また、異なる国においてもICMIF会員ならではの共通的な課題や考え方があることの発見や共有によって参加者間の距離が縮まり、国内外でのネットワーク構築を図ることができました。

 

  (2) トレーニングプログラム

トレーニングプログラムでは、講師にジム・オルーリン氏(JOLコンサルティング)を迎え、リーダーシップ、学習スキルに関する講義とあわせて、参加者との意見交換の場が設けられました。

講義内容は、「リーダーとして求められるコミュニケーション能力」についてでした。①モノの捉え方には複数の視点があり、受け手により捉え方に大きな違いが生じること、②人は自分が信じたいものしか見えなくなる傾向にあることの2点を指摘したうえで、他者に何かを理解してもらうための重要な要素として、以下の3点が挙げられました。

【他者に理解してもらうための重要な要素】

ア 自分事として受け取ってもらうこと
イ どのような価値があるのかを理解してもらうこと
ウ 具体的にどう行動すればよいのかを理解してもらうこと

本講義は、相手に伝わりやすい表現について再確認する機会となり、翌日のICMIF会員の経営幹部との懇談への準備にもなりました。

 

 (3) ICMIF会員の経営幹部との懇談

プログラムのメインが、ICMIF会員の経営幹部との懇談です。

参加者全員があらかじめ決められた8つの班に分かれ、それぞれの班の円卓に経営幹部1名、ヤングリーダー参加者7~8名が座り、参加者が経営幹部に自由に質問をしていくという形式で進められました。私たちの世代にとって、通常は、自組織内ですら経営幹部と懇談する機会が少ない中で、外国の一流組織の経営幹部と直に話ができる機会はとても貴重な経験であり、今後の成長において意味のある経験になるだろうというコンセプトのもとに設定されました。

経営幹部側も、さまざまな国・地域から選定され、日本からは本会の三間真一代表理事専務が参加しました。経営幹部との懇談内容について、私たち日本からの参加者が、懇談の中で印象に残った経営幹部の言葉を下表でいくつか紹介させていただきます。

 

経営幹部名
所属組織
所属国
ヤングリーダー
参加国:人数
印象に残った経営幹部の言葉等
ヒルデ・
フェルナイレン氏
P&V
ベルギー
日本:2名
アメリカ:2名
イタリア:1名
ドイツ:1名
フィリピン:1名
組織のイノベーションを実現するためには、若者たちがその価値を組織内に説明していく必要がある。P&Vの新入職員には入社後3か月ごとに部署異動をさせ、組織全体を知ってもらうようにしている。また年に一度は全職員が集まり様々なセミナーを開催している。今後、自動運転車が台頭すると、事故の責任所在がわからず、保険の相手が変わる可能性もある。このように環境や状況は常に変化していくが、この変化に対応できるような組織を目指してほしい。
トム・ギトゴ氏
CIC保険グループ
ケニア
日本:1名
アメリカ:2名
カナダ:1名
イギリス:1名
ドイツ:1名
若手のリーダーを育てることが重要。ケニアは人口構成比において若年層が多い。農家や貧困層が人口の大半をしめておりこれらに向けた商品提供が必要だと考えている。保険普及率が低いことも問題であるため、ICMIFの「5-5-5マイクロインシュランス開発戦略」のプロジェクトにもケニアは参加している。ドイツをはじめとした各国の保険会社にも支援してもらいながら実現に向けて取り組みしている。携帯電話やスマートフォンの普及率が高い国柄もあるためモバイル技術の期待もできると考える。
ケン・ウン氏
NTUCインカム
シンガポール
日本:2名
アメリカ:1名
カナダ:1名
イギリス:2名
スイス:1名
アマゾンとアリババの両社がシンガポールに進出した。東南アジア市場を巡って競争が激化しているなかで、チャンスを確実に掴んでいくためには、組織も常に変化していかねばならず、デジタル化はその手段と成り得る。一方で、社会ビジネスにおいては、利益を追求するだけでなく、社会的な評価も求められる。デジタル化によるサービス提供と相反する部分もあるなか、どこでバランスを保っていくか、社会のニーズを掴みつつ判断する必要がある。
ブラッド・
ヒューイット氏
スライベント・
フィナンシャル
アメリカ
日本:2名
イギリス:1名
スイス:1名
デンマーク:1名
フランス:1名
南アフリカ:1名
スマートフォンアプリを利用し、ミレニアル世代(若年層、GenY)へのアプローチを強化している。アプリによる対話形式のコンサルティングと合わせ、ワトソン(IBM)の活用も検討している。若手の育成、モチベーションアップには力を入れており、責任のある仕事を任せたり、重要な会議に積極的に参加させ、様々な仕事を経験できるような工夫を行っている。
ロブ・
ウェセリング氏
コーポレーターズ
カナダ
日本:1名
ドイツ:2名
スイス:1名
フランス:1名
アルゼンチン:1名
レバノン:1名
カナダでは、時々洪水に悩まされていたものの、リスクは可視化されていなかった。それを独自の洪水リスクモデルを開発することで、洪水に備える住宅保険を普及させた。利益の見込みが立たないことから、当初社内でも反対意見があったが、住民の生活を守ることを第一に考え、洪水リスクを認識してもらうことが何よりも重要との判断のもと、開発に踏み切った。このような判断ができたのは当社が協同組合保険事業であるからこそであった。
クマール・
シャイラブ氏
アップリフト・
ミューチュアル
インド
日本:2名
アメリカ:1名
カナダ:1名
イギリス:1名
ドイツ:1名
ベルギー:1名
インドの25%の家庭は1回の入院で生活困難な状態に陥るような状態であるが、このようななかで組合員参加型の相互扶助組織・医療費調達システムを設立した。国内IT企業と提携したスマートフォンアプリの開発・運用を行い、保障制度、医療機関の情報提供等を行っている。インドは非常に人口が多く、若い世代も多い。情報の不均衡をなくし、組合員自身が運営する組織を目指して、覚悟をもって取組みを進めていく。
三間 真一氏
JA共済連
日本
日本:1名
アメリカ:1名
イギリス:2名
フランス:1名
ベルギー:1名
日本は世界の中でも協同組合や共済事業が成功している国の1つである。その理由は、中世から現在に至るまで、さまざまな時代において、その土地の習慣や文化、伝統に応じた協同を行ってきたことだと思う。現在、若者の共済・保険離れによるリスク対策への低下、社会の高齢化、格差社会の出現など克服すべき課題は多数ある。これらに向き合い、地域に根ざし、社会的責任を果たし続けていくことが、今後も事業が発展し続ける鍵となると思われる。
アンネ・メッテ・
トフテゴー氏
LBグループ
デンマーク
日本:2名
アメリカ:1名
イギリス:1名
カナダ:1名
ベルギー:1名
ニュージーランド:1名
デンマークではすべての国民が保険に加入しており、誰でも保険にアクセス出来る。保険先進国では他社商品・サービスとの差別化やコスト低減を含む効率化に取り組むことが重要だが、一方で、テクノロジーの導入の流れとは別に、組合員とのコミュニケーションを重視し、対面でのコミュニケーションサービスによる安心感も担保していく必要がある。

 

4. むすびに

国、経済環境、自然環境、文化、人種、宗教等、それぞれ置かれた環境が大きく異なっても、「組合員に安心や満足を提供する」という理念、それは世界の協同組合/相互扶助の保険組織に共通のものであることを改めて実感したというのが、今回の参加者に共通する感想です。

加えて、世界そのものを取り巻く環境も、ものすごい速さで変わっており、私たちもその対応に日々追われ、悩み、もがいています。今回、総会に参加したことで、同じような悩みを抱えている仲間が世界各地にいて、同じようにもがいている現状を共有できたことが何よりも励みになり、勇気となりました。

今後、そんな仲間と再会できる機会があれば「胸を張って再会したい」というのも共通の思いです。今回このような機会に恵まれたこと、そこでの出逢い、それらへの感謝の気持ちを忘れず日々の業務に励み、再会に向けた準備にしたいところです。

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